1999年6月30日
社団法人トロン協会 ITRON部会

「μITRON4.0仕様」公開のお知らせ

μITRON4.0仕様を公開

 社団法人トロン協会(会長: 秋草直之)ITRON部会は、機器組込み制御システム用のリアルタイムOSの業界標準であるμITRON仕様の最新バージョンとして、「μITRON4.0仕様」を公開しました。また、6月30日と7月1日の両日に都内で開催するITRONオープンセミナーにおいて、μITRON4.0仕様についての紹介・解説を行います。

μITRON仕様の現状

 当協会の最新の調査結果によると、最近開発された組込みシステムの約30%にμITRON仕様のリアルタイムOSが使用されており、μITRON仕様はこの分野の業界標準となっています。とりわけ、個人用情報機器(カーナビ, 電子手帳など)、通信端末(携帯電話, 留守番電話など)、AV機器(テレビ, ビデオ, デジタルカメラなど)といったコンシューマ分野でのシェア(使用率)が高く、近年の電子機器産業の発展を支える技術の1つとなっています。

μITRON4.0仕様の特徴

 μITRON4.0仕様は、近年のコンピュータ技術の急速な発展に対応することを目的として、従来のμITRON仕様に対して数々の改良を行ったもので、来るべき情報ネットワーク化社会の基盤技術の1つとなるものです。μITRON4.0仕様は、従来のμITRON仕様と比較して、次のような特徴を持っています。

仕様書の入手方法

 μITRON4.0仕様の全文は、以下のITRONプロジェクトホームページからダウンロードすることができます。

http://www.itron.gr.jp/

仕様策定の背景と新たな規定

 近年、デジタル家電などの電子機器の高機能化や複合化が著しく、それに伴って、それを制御する組込みシステムの大規模化・複雑化が進行しています。このような中で、これまでのμITRON仕様の策定にあたって基本としてきた「弱い標準化」の方針だけでは、μITRON仕様OSの上で動作するソフトウェア部品(ミドルウェア)やアプリケーションのポータビリティが十分でなく、大規模なソフトウェア開発の障害となっているという指摘がありました。また、近年の技術発展に伴って新しく出てきた要求事項に対応する必要も指摘されていました。

 μITRON4.0仕様は、これらの問題を解決するために、2年余りに渡って検討してきたものです。仕様全体としては、これまでの「弱い標準化」の方針を維持しつつ、アプリケーションのポータビリティを向上させるために、標準的な機能セットを厳格に定める「スタンダードプロファイル」を規定しました。また、自動車の制御応用においては、よりコンパクトで高性能なリアルタイムOSが要求されることから、スタンダードプロファイルよりも機能を限定した「自動車制御用プロファイル」も規定しました。

 また、新しく出てきた要求事項に対応するために、従来のμITRON仕様でサポートしていなかった機能として、次に挙げる機能を新たに規定しました。

仕様策定の経緯

 ITRON部会では、μITRON4.0仕様の標準化検討を行うにあたって、参加資格をトロン協会のメンバに限定しない「μITRON4.0仕様研究会」を設け、組込みシステム分野のソフトウェア技術者に広く参加を呼びかけました。その結果、μITRON4.0仕様の検討には、約50社から約70名の技術者の参加を得ることができました。μITRON4.0仕様研究会では、今回公開するμITRON4.0仕様以外にも、μITRON仕様OSとデバッグ環境との間のインタフェースの標準化や、デバイスドライバの設計ガイドラインを策定するための検討を進めています。これらの検討成果も、検討が完了し次第、公開していく予定です。

 ITRON部会では、これらの標準化活動を通じて、μITRON仕様の業界標準としての立場をより確かなものとし、さらに国際的な業界標準仕様へと展開させたいと考えています。

問い合わせ先

 本発表に関するお問い合わせは、以下いずれか宛にお願いします。

(社)トロン協会 ITRON部会 事務局
 竹内 透
 TEL: 03-3454-3191
 FAX: 03-3454-3224
 Email: torutake@sepia.ocn.ne.jp

(社)トロン協会 ITRON部会 幹事/μITRON4.0仕様研究会 幹事
 高田 広章(豊橋技術科学大学 情報工学系)
 TEL: 0532-44-6752
 FAX: 0532-44-6781
 Email: hiro@ertl.ics.tut.ac.jp

以上

【参考: ITRONプロジェクトとは?】

 ITRONプロジェクトは、組込みシステムのためのリアルタイムOS仕様と、それに関連する仕様の標準化を行うプロジェクトです。小規模な組込みシステム用に設計されたμITRON仕様のリアルタイムOSは、極めて多くの機器に採用されており、この分野における業界標準となっています。ITRONプロジェクトは、トロンプロジェクトの1つのサブプロジェクトとして、社団法人トロン協会のITRON部会が中心となって推進しています。ITRONプロジェクトに関する詳細は、以下のITRONプロジェクトホームページをご参照ください。

http://www.itron.gr.jp/

【参考: μITRON仕様OSの主な適用例】

AV機器, 家電
テレビ, ビデオ, デジタルカメラ, セットトップボックス,
オーディオ機器, 電子レンジ, 炊飯器, エアコン, 洗濯機

個人用情報機器, 娯楽/教育機器
PDA, 電子手帳, カーナビ, ゲーム機, 電子楽器

パソコン周辺機器/OA機器
プリンタ, スキャナ, ディスクドライブ, CD-ROMドライブ,
コピー, FAX, ワープロ

通信機器
留守番電話機, ISDN電話機, 携帯電話, PHS, ATMスイッチ,
放送機器/設備, 無線設備, 人工衛星

運輸機器, 工業制御/FA機器/設備機器, その他
自動車, プラント制御, 工業用ロボット, エレベータ, 自動販売機,
医療用機器, 業務用データ端末


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