1998年5月14日
(社)トロン協会 ITRON専門委員会

「ITRON TCP/IP API仕様」公開のお知らせ

(社)トロン協会 ITRON専門委員会は、組込みシステム用のTCP/IPプロトコ ルスタックAPI(アプリケーションプログラムインタフェース)の仕様として、 「ITRON TCP/IP API仕様」を公開します。

「ITRON TCP/IP API仕様」は、ソケットインタフェースよりもコンパクト で高速なTCP/IPプロトコルスタックの実装を可能にするAPI仕様です。主に ITRON仕様リアルタイムOSでの使用を想定していますが、他のリアルタイムOS でも利用可能です。

また「ITRON TCP/IP API仕様」は、他のITRON仕様と同様、完全にオープン な仕様であり、誰でも自由に、一切のライセンス料なしで利用することができ ます。仕様書の全文は以下のURLからダウンロードできます(現時点では日本 語のみ。英文の仕様書は数ヶ月内に公開予定)。

http://tron.um.u-tokyo.ac.jp/TRON/ITRON/SPEC/tcpip-j.html

情報家電をはじめとする組込み機器のインターネット接続は急増しており、 接続に必要となるTCP/IPプロトコルスタックは、最も重要な組込みシステム用 ソフトウェア部品の一つとなっています。ところが、TCP/IPプロトコルスタッ クのAPIとして広く利用されているソケットインタフェースは、小規模な組込 みシステムには不向きであることが指摘されており、組込みシステムに適した APIの標準化が求められていました。

こうした背景から (社)トロン協会 ITRON専門委員会では、組込みシステム に適したTCP/IPプロトコルスタックのAPI仕様の標準化活動を行うことを呼び かけ、その結果、1997年3月にEmbedded TCP/IP技術委員会が結成されました。 今回公開するITRON TCP/IP API仕様(Ver 1.00.00)は、Embedded TCP/IP技術 委員会における約1年間の検討を経て策定された仕様案を、ITRON専門委員会に おいてITRON仕様と認定したものです。

Embedded TCP/IP技術委員会のメンバ社の中には、すでにITRON TCP/IP API 仕様に準拠したTCP/IPプロトコルスタックの開発を始めている会社もあり、近 い将来内に「ITRON TCP/IP API仕様」準拠製品の販売が開始されるものと予想 されます。

ITRON専門委員会 委員長の田丸喜一郎は、「ITRON TCP/IP API仕様に準拠 した製品が複数の会社から提供されることは、TCP/IPプロトコルスタックのユー ザと開発メーカの両者に大きなメリットをもたらします。ユーザにとっては、 製品選択の幅が広がり、結果的に進んだ技術をリーゾナブルなコストで導入で きることになります。開発メーカ間では、競争を通じた技術向上が期待できま す。また、TCP/IP APIをITRON仕様の1つと位置付けることにより、TCP/IPプロ トコルスタックも組込みシステム向けのソフトウェア製品の1つとの位置付け を確かなものにするものと期待できます。」と述べています。

Embedded TCP/IP技術委員会のメンバであり、組込みシステム用のTCP/IPプ ロトコルスタック製品の分野で広範な実績を持つ (株)アクセス 副社長の鎌田 富久氏は、「組込み用のTCP/IPは、情報家電向けのブラウザやメール、プリン タやファックスのLAN接続、LAN対応のFA機器など様々な分野で利用されており、 今後ますます市場が大きくなることが予想されます。これらの分野では、 TCP/IPの省メモリでの実装、高性能、きめこまかい制御、信頼性などが重要で、 リアルタイムOS向けの組込みTCP/IPの標準的な低レベルAPI仕様が望まれてい ました。今回の標準案は、まさにこの要求を満たす世界初のものと言えるでしょ う。」と述べています。

また、同じくEmbedded TCP/IP技術委員会のメンバであり、米国において組 込みシステム用のソフトウェア部品分野で実績を持つU.S.Software社の日本代 理店である (株)エーアイコーポレーション 代表取締役社長の加藤博之氏は、 「ITRONは自作も含めて日本で使用されているリアルタイムOSの40%を占める真 の標準になりつつありますが、周辺のソフトウェア部品の標準化が重要な課題 として残されていました。今回まずTCP/IPの標準仕様が出来上がったことは、 大きなメリットを開発者にもたらすことでしょう。弊社が総代理店を努める米 国のU.S.Software社は米国、アジア、欧州におけるITRONへの注目の高まりに 対応する形で今回のTCP/IP仕様を含め世界的にITRON仕様のサポートに注力し てゆく予定です。」と述べています。

ITRONプロジェクトは、組込みシステムのためのリアルタイムOS仕様と、そ れに関連する仕様の標準化を行うプロジェクトです。小規模な組込みシステム 用に設計されたμITRONリアルタイムカーネル仕様は、極めて多くの組込み機 器に採用されており、この分野における業界標準となっています。ITRONプロ ジェクトは、トロンプロジェクトの1つのサブプロジェクトとして、(社)トロ ン協会のITRON専門委員会が中心となって推進しています。ITRONプロジェクト に関する詳細は、以下のITRONホームページをご参照ください。

http://tron.um.u-tokyo.ac.jp/TRON/ITRON/

なお、本発表に関するお問い合わせは、以下いずれか宛にお願いします。

(社)トロン協会 ITRON専門委員会
 事務局 担当: 天野 亘孝
 TEL: 03-3454-3191
 FAX: 03-3454-3224
 Email: amanonob@blue.ocn.ne.jp

ITRON専門委員会 幹事/Embedded TCP/IP技術委員会 幹事
 高田 広章 (豊橋技術科学大学 情報工学系)
 TEL: 0532-44-6752
 FAX: 0532-44-6781
 Email: hiro@ertl.ics.tut.ac.jp

以上

用語解説

TCP/IP: インターネットで利用されている通信手順の総称。インター ネットに接続される機器にはすべて、TCP/IPプロトコルスタックを組み込むこ とが必要。

API: アプリケーションプログラムインタフェースの略で、アプリ ケーションプログラムから、OSやソフトウェア部品を呼び出すためのインタフェー スのこと。API仕様が標準化されることで、アプリケーションプログラムをそ のままで、他のOSやソフトウェア部品とともに動作させることが可能になる。



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