ITRON Newsletter No.32 (HTML Edition)

(社)トロン協会 ITRON専門委員会
〒108-0073 東京都港区三田1丁目3番39号 勝田ビル5階
TEL: (03) 3454-3191 FAX: (03) 3454-3224

目次

ITRONオープンセミナーご案内
ITRON TCP/IP API仕様公開のお知らせ
RTOS自動車応用技術委員会の活動成果
ITRON の利用動向に関するアンケート調査結果について
1998年度の標準化活動計画
ITRON専門委員会 新メンバ紹介
(株)デンソークリエイト ご紹介
ITRON関連書籍の一覧
TRONプロジェクト国際シンポジウム, トロン協会10周年式典報告
ESC Spring '98 報告
関連製品紹介
JTRON仕様OS「JBlend」 by (株)アプリックス

ITRONオープンセミナーご案内

今年も例年通り、ITRONオープンセミナーを、7月15日(水)にアルカディア 市ヶ谷 (東京都千代田区) において開催致します。このセミナーは、ITRONプ ロジェクトに関する最新の状況や、ITRON仕様の実装状況・応用状況、開発環 境の状況などを紹介するために毎年1回開催しているもので、今回が8回目の開 催になります。

今回のセミナーでは、午前中のセッションで、ITRONプロジェクトの最新状 況を概観した後、現在検討中のμITRON4.0リアルタイムカーネル仕様の概要に 加えて、μITRON4.0仕様研究会の活動内容について紹介します。午後には、 μITRON4.0仕様研究会において検討を予定しているITRON仕様OSのデバッギン グインタフェースの標準化をテーマにパネルディスカッションを行い、何が問 題になっているのかや、その解決へ向けてのアプローチについて議論を行いま す。

続いて、ITRONプロジェクトの最新の成果として、組み込みシステムに向い たインターネットプロトコルのAPI仕様であるITRON TCP/IP API仕様と、 ITRON仕様OSとJava実行環境を融合させたOS仕様であるJTRON (Ver.2) 仕様の 概要について紹介します。また、ITRON関連製品・応用事例の紹介のセッショ ンでは、ITRON仕様に準拠した製品ならびにITRON仕様OSをサポートするツール の紹介や、ITRON仕様OSの応用事例についての紹介をお願いしています。最後 に、恒例となりました、トロンプロジェクトリーダである坂村健氏による特別 講演も予定しています。

日時: 7月15日(水) 10:00〜17:30
場所: アルカディア市ヶ谷 (東京都千代田区; JR市ヶ谷駅 徒歩2分)
定員: 150名
参加費(消費税込):
トロン協会会員: 5,000円
一般: 7,000円
学生: 5,000円
プログラム(予定):
10:00〜10:30 ITRONプロジェクトの最新動向
田丸 喜一郎 (ITRON専門委員会/(株)東芝)
10:30〜12:00 μITRON4.0仕様の概要
高田 広章 (ITRON専門委員会/豊橋技術科学大学)
13:00〜14:30 パネルセッション「ITRONのデバッギングインタフェー ス標準化に向けて」
(パネラ交渉中)
14:30〜15:30 ITRONプロジェクトの最新の成果
  • 「ITRON TCP/IP API仕様の概要」
    児玉 剛 (Embedded TCP/IP 技術委員会/アルパイン情報システム(株))
  • 「JTRON (ver.2) 仕様の概要」
    八谷 祥一 (Java Technology on ITRON-specification OS 技術委員会/ (株)アプリックス)
15:45〜17:45 ITRON関連製品・応用事例の紹介
ITRON関連製品の紹介 3件と応用事例の紹介を予定 (詳細検討中)
17:45〜18:30 特別講演
坂村 健 (東京大学)

なお、最終的なプログラムおよ び参加申し込み方法については、ITRONホーム ページを参照するか、(社)トロン協会 ITRONオープンセミナー担当 (TEL: (03) 3454-3191, FAX: (03) 3454-3224) までお問い合わせ下さい。今回も多 数のご参加をお待ちしています。

ITRON TCP/IP API仕様公開のお知らせ

ITRONニュースレター上でも何度かお知らせしましたが、組み込みシステム に向いたTCP/IP API仕様の検討を行うために、ITRON専門委員会の呼びかけに より、Embedded TCP/IP技術委員会が昨年の3月に発足し、TCP/IP API仕様の検 討作業を行ってきました。その結果、今年の4月に最初バージョンの仕様が完 成し、5月にITRON専門委員会でITRON仕様と認定された結果、「ITRON TCP/IP API仕様 (Ver.1.00.00)」として公開されることとなりました。

現在、TCP/IPのAPI (アプリケーションプログラムインタフェース) として は、UNIX用に設計されたソケットインタフェースが広く使われていますが、小 規模な組み込みシステム用には適当でないという指摘がなされていました。今 回公開するITRON TCP/IP API仕様は、ソケットインタフェースの問題点を解決 し、組み込みシステムに向いた効率のよいTCP/IPプロトコルスタックの実現を 可能にするものです。Embedded TCP/IP技術委員会のメンバの中には、すでに この仕様に準拠した製品の開発を開始している会社もあり、数カ月後には ITRON TCP/IP API仕様に準拠した製品が発売されるものと予想されます。

ITRON TCP/IP API仕様は、ITRONホームページ からダウンロードすることができます。今後、ITRONオープンセミナーや、 国内外の組み込みシステム分野の展示会やセミナー等において、ITRON TCP/IP API仕様の普及・広報活動を行っていく予定です。

なお、Embedded TCP/IP技術委員会では、仕様に準拠した製品の実装が完了 し、μITRON4.0リアルタイムカーネル仕様がフィックスする約半年後をメドに、 仕様の細部の見直しを行うこととしています。

RTOS自動車応用技術委員会の活動成果

ITRON専門委員会では、応用分野をカーエレクトロニクスに絞ってITRON仕 様OSの応用技術の調査・研究ならびに標準化活動を行うために、昨年6月より RTOS自動車応用技術委員会の活動を行ってきましたが、この度、自動車制御応 用に向いたリアルタイムカーネル仕様に対する提案がまとまり、公表すること となりました。

自動車の制御の分野は、厳しいコスト制約下で高い応答性と信頼性が求め られる応用分野で、これまでリアルタイムOSの適用が難しいとされてきました。 RTOS自動車応用技術委員会では、自動車制御に適用できるリアルタイムカーネ ル仕様について検討を行ってきましたが、その中から、車両制御に必要な機能 のみを抽出したμITRON仕様のサブセット規定と、待ち状態のないμITRON仕様 の2つの提案をまとめました。これらの提案は、μITRON4.0仕様研究会におけ るカーネル仕様の検討に反映される予定です。また、提案の内容については、 RTOS自動車応用技術委員会 活動成果として、ITRONホームページから公開する予定です。

ITRON の利用動向に関するアンケート調査結果について

(社)トロン協会では、昨年の11月から今年の1月にかけてITRON仕様OSの利 用動向に関するアンケート調査を実施しましたが、この度その調査結果がまと まりました。調査結果は、調査にご協力頂いた方に希望された方法で送付する とともに、ITRONホームページからも公開する 予定です。

(社)トロン協会では昨年より、テーマをITRON仕様OSに絞り、組み込みシス テムの開発技術者を主な調査対象としてアンケート調査を行っています。アン ケート調査票を郵送や展示会などで広く配付した結果、組み込み機器の設計・ 開発技術者を中心に、昨年を5割近く上回る438名の方からの回答を頂くことが できました。調査にご協力頂きました皆様に、この場をお借りして厚くお礼申 し上げます。

アンケート回答者には、最近開発した最大3つの組み込み機器について、ア プリケーション分野や使用OSなどを回答して頂きましたが、その結果、ITRON 仕様OSを用いている機器が約28% (内、市販のITRON仕様OSが約16%、自社用の ITRON仕様OSが約12%)、ITRON仕様以外の市販OSを利用している機器が約29%、 自社用の独自仕様OSを用いている機器が約18%、残りの約25%はOSを用いていな いという結果となりました。昨年との比較では、自社用独自仕様OSを使ってい る機器とOSを用いていない機器の割合が若干減少し、ITRON仕様OSやその他の 市販OSを利用している機器が若干増加していますが、いずれも3〜4%程度の変 化で、確かな傾向をつかむには今後の継続調査が必要と考えています。

その他、リアルタイムOSの問題点や、ITRON仕様OSの利点・欠点、ITRONに 関連する活動の周知度や今後の活動に対する意見など、ITRONプロジェクトの 今後の方針決定に有益な結果を得ることができました。調査結果の詳細につい ては、ITRONホームページを参照下されば幸い です。

1998年度の標準化活動計画

ITRON専門委員会では、1998年度、次のような標準化活動を進めることを計 画しています。

1998年度の活動の中心は、前号で紹介したμITRON4.0仕様研究会になりま す。前号で紹介した3つのワーキンググループ (カーネル仕様WG, アプリケー ション設計ガイドラインWG, デバイスドライバ設計ガイドラインWG) に加えて、 ITRON仕様OSとデバッグ環境とのインタフェースの標準化を行うために、デバッ ギングインタフェース仕様WGも設置することになりました。これらの内、カー ネル仕様については年度の前半、他の仕様ならびにガイドラインは年度内に取 りまとめることを目標に活動を行います。

上にも紹介した通り、Embedded TCP/IP技術委員会は、ITRON TCP/IP API仕 様がまとまったことにより、仕様の細部の見直しを予定している半年後まで、 しばらくの間活動を休止します。RTOS自動車応用技術委員会は、やはり上で紹 介した通り3月時点で活動を成果をとりまとめましたが、新年度からはRTOS自 動車応用技術研究会という形で、焦点を調査研究に移して活動を継続します。

昨年の11月に活動を開始した Java Technology on ITRON-specification OS技術委員会は、今年の3月をメドに仕様をまとめる予定でしたが、検討の進 行が当初の予定より若干遅れており、仕様がまとまるまでの数カ月間活動を継 続します。

以上の他にも、μITRON仕様カーネルのC++言語バインディングの標準化な どが必要性の高い活動テーマとして候補に挙がっており、他の活動が一段落し た時点で標準化活動を開始することを検討しています。

ITRON専門委員会 新メンバ紹介

1998年4月から、(株)デンソークリエ イトがITRON専門委員会のオブザーバメンバに加わりました。なお、ITRON 専門委員会の最新のメンバリストは、ITRONホーム ページにあります。

(株)デンソークリエイト ご紹介

当社は名古屋に位置し、ソフトウェアの受託開発及びパッケージ・ソフト ウェアの開発販売などを行っています。前者では移動機器用の組み込みソフト ウェアを多く手掛けており、その一環としてμITRON仕様のカーネル開発も行っ ています。また後者ではソフトウェアの開発支援ツールを nnHEADWAY/P、 nnCOPY、nnCIRCUITなどの商品として提供させていただいています。

ITRON関連書籍の一覧

1998年4月1日時点で、ITRON専門委員会が編集し、発行されているITRON関 連の書籍は別表の通りです。ご希望の方は、各発売元にお問い合わせ下さい。

μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版には、μITRON3.0仕様の最新バージョ ン (Ver 3.02.02) が収められています。旧版のμITRON3.0標準ハンドブック (Ver 3.00.00) から Ver 3.02.00 への改訂点は、ITRON標準ガイドブック2 に 掲載されています。Ver 3.02.00 から Ver 3.02.02 へは、構成の変更や説明 の追加だけで、仕様の技術的な内容の変更はありません。

ITRON・μITRON標準ハンドブックは、μITRON Ver 2.0 と ITRON2 の仕様 書を1冊にまとめたものです。ITRON標準ガイドブック2 は、μITRON3.0仕様を メインのターゲットとして作成されています。ITRON標準ガイドブック'92-'93 は、タイトルの期間を過ぎていますが、μITRON仕様 Ver 2.0 や ITRON2仕様 を使われている場合には、現在でも有効に活用できます。

ITRON関連書籍一覧
書籍名 分類 価格 発行元 発行年 ISBN番号
ITRON・μITRON標準ハンドブック 和文仕様書 4,800円 パーソナルメディア 1990 ISBN4-89362-079-7
μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 和文仕様書 4,000円 パーソナルメディア 1997 ISBN4-89362-154-8
ITRON標準ガイドブック'92-'93 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1992 ISBN4-89362-197-6
ITRON標準ガイドブック2 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1994 ISBN4-89362-133-5
μITRON Specification Ver 2.01.00.00 英文仕様書 12,000円 トロン協会 1989
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 英文仕様書 15,000円 トロン協会 1990
μITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 英文仕様書 トロン協会 1994
μITRON3.0: An Open and Portable Real-Time Operating System for Embedded Systems 英文仕様書 $40.00 IEEE CS Press 1997 ISBN0-8186-7795-3
※ 価格には消費税を含みません。
※ トロン協会会員に対しては、会員価格が設定されています。
※ 英文仕様書は、
ここから公開しています。

TRONプロジェクト国際シンポジウム,トロン協会10周年式典報告

さる3月12日(木)、東京大学 山上会館 (東京都 文京区) において、第14回 TRONプロジェクト国際シンポジウムが開催されました。今回のシンポジウムは 招待講演を中心に構成されましたが、ITRONのセッション (15時45分〜16時45 分) では、豊橋技術科学大学の高田広章氏による "Recent Results of the ITRON Subproject" というタイトルの発表と、NEC の中本幸一氏による "Integration of Java and ITRON Kernel" というタイトルの発表がありまし た。

また、ITRONにも関連して、"TRON's Potentionality of Partership with Other Computer Platforms" というタイトルで、TRONプロジェクトによる標準 化と他のプラットフォームとの関連について議論するパネルセッションが行わ れました。このパネルセッションの詳細は、TRONWARE vol.51 に紹介されてい ますので、ご参照下されば幸いです。

翌3月13日(金)には、アルカディア市ヶ谷 (東京都 千代田区) において、 (社)トロン協会 創立10周年記念式典が開催されました。式典では、主催者・ 来賓の挨拶に続いて、報告・講演・パネルセッションが行われました。ITRON 関連では、「組込ソフトウェアの標準化と将来展望」というタイトルで、 ITRONプロジェクトのこれまでを振り返り、今後を展望するパネルセッション が行われました。パネルセッションには、浅見謙 (トヨタ自動車(株))、新井 雅之 (メンター・グラフィックス・ジャパン(株))、榎本龍彌 (三菱電機シス テムLSIデザイン(株))、高田広章 (ITRON専門委員会/豊橋技術科学大学)、細 井洋一 (日本サンマイクロシステムズ(株)) の各氏がパネリストとして参加さ れ、ITRON専門委員会/(株)東芝の田丸喜一郎氏が司会を担当されました。

ESC Spring '98 報告

ITRON専門委員会では、3月31日(火)〜4月2日(木)に米国イリノイ州 Chicago において開催された Embedded System Conference (ESC) Spring に おいて、次の広報活動を行いました。

まず、有料のテクニカルセミナーにおいて、ITRON専門委員会/豊橋技術科 学大学の高田広章氏が、"Designing Small-Scale Embedded Systems with μITRON Kernel" というタイトルの講演を行いました。講演では、リアルタイ ムカーネルの小規模な組み込みシステムへの適用状況について紹介した後、リ アルタイムカーネルを用いて小規模な組み込みシステムを開発する手法につい てμITRON仕様を例に使って解説しました。なお、この講演で使用した OHP は、 ITRONホームページ資料室のページにあります。

また今回はブースの出展は行いませんでしたが、(社)日本システムハウス 協会 (JASA) のブースにおいて、ITRONに関するパンフレットを配付しました。

関連製品紹介

ここでは、ITRONに関連する開発ツールやソフトウェア部品等について、簡 単な紹介をします。

JTRON仕様OS「JBlend」
(株)アプリックス

アプリックスの「JBlend」は、JTRON仕様に準拠したリアルタイムJavaOSで す。ITRONとJavaOSを融合したハイブリッドOSとして、「高い実行効率」「割 り込み応答性の良さ」といったITRONの特長と、「プラットフォーム独立」 「ネットワーク対応」「GUI環境」「オブジェクト指向」などのJavaの特長と を併せ持っています。

【JBlendの特徴】

JBlendには、ITRON仕様カーネルが組み込まれています。Javaスレッドは ITRONタスクとして実現されており、Javaスレッド同士間、ITRONタスクとJava スレッド間で、ITRONのセマフォ、イベントフラグ、メイルボックスといった タスク間の同期・通信機能を利用できます。ITRON仕様カーネルとJavaOSが接 する部分に、PAL (Processor Abstraction Layer) と呼ばれる抽象化層を設け たため、ITRON側の変更なしにJavaの実行環境を構築できます。JavaOSのプロ セッサ依存APIは、このPALを介してITRONのAPIにマップされます。また、Java からITRONのカーネルオブジェクトを利用するためのJTRONクラスが提供されて おり、ITRONとJavaの協調動作を可能にしています。

【JavaOSの機能拡張】

JBlendの機能拡張用モジュール群「JOptions」を使えば、FD、CD-ROM、DVD などの読み書き、IrDAやIEEE1394インタフェース、日本語表示やかな漢字変換 機能などがJava環境で利用できます。またJBlendには、プログラムサイズやメ モリサイズを増やさずにJavaVMを大幅に高速化する独自技術「FTT」も反映さ れています。

【JBlendの適用範囲】

JBlendは、NECの「V800」「VR」シリーズ、日立の「SH-2」および「SH-3」、 東芝「TX39」、さらにx86系のCPUに実装済みで、これ以外のプロセッサに対す る実装作業も進行中です。JBlendは現在ITRONが使われている分野に適用でき るのはもちろん、JavaのGUIやネットワーク機能の利用により、家電・OA機器、 携帯端末やカーナビのネットワーク化など、その応用範囲を広げることができ ます。

【問い合わせ先】

詳細は http://www.JBlend.com/ を参照ください。


※ このニュースレターは、TRONWARE vol.51 および TRON PROJECT JOURNAL No.51 に掲載されたものを、WWW で公開するために再編集したもので す。

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