2000年11月01日
(社)トロン協会 ITRON部会

「JTRON2.1仕様」公開のお知らせ

(社)トロン協会 ITRON部会では、Java技術とITRON仕様の特徴を融合し、プログラムのポータビリティとリアルタイム制御に優れたシステムを実現可能なJTRON1.0仕様を97年末に、JTRON2.0仕様を98年秋に発表するなど、JTRON仕様の策定を続けてまいりました。今般、バージョンアップした「JTRON2.1仕様」を公開するはこびとなりましたので報道各位にお知らせいたします。

JTRON2.1仕様の改訂では、ITRONの最新仕様のμITRON4.0仕様への対応、Java技術の最新仕様、JNI(Java Native Interface)への対応、この他、JTRON仕様の実装経験による仕様見直しも実施しました。

JTRON2.1仕様を利用すれば、多機能、高機能で複雑なビデオカメラや携帯電話などのソリューション開発期間の短縮を実現できます。JTRON2.1仕様は、情報家電時代を実現する上で重要な役割を果たすものと期待されます。なお、JTRON2.1仕様準拠ソフトウェアは、複数のメーカーから発売される予定です。

JTRON仕様とは

最近、組込みシステムの分野においても、Javaの技術が注目を浴びています。Java実行環境は、ネットワークからダウンロードしたプログラムを安全に動作させることができる、グラフィックスを用いたユーザインタフェースを容易に構築することができる、といった利点がある一方で、バイトコード処理系のオーバヘッドやガベージコレクションの必要性から、リアルタイム処理には向かないとされています。そこで、ITRON仕様OS上にJava実行環境を実装し、アプリケーションシステムを、Java に向いた部分はJavaプログラム、ITRON仕様OSに向いた部分はITRONタスクの形で構築することで、両者の利点を活用する、いわゆるハイブリッドアプローチが有力と考えられています。

JTRONはハイブリッドアプローチをとるシステムにおいて、Javaスレッドとリアルタイムタスクの協調動作を支援する機能、すなわち、Javaスレッドからリアルタイムカーネルを呼び出すためのインタフェースとリアルタイムタスク間の通信インタフェースを標準化したものです。上述したように、ハイブリッドアプローチを取る場合、Javaスレッドからリアルタイムカーネルのサービスコールを呼び出すなど、リアルタイムタスクとJavaスレッド間でデータのやりとりをする必要があります。

また、Javaスレッドとリアルタイムタスクが協調動作する場合に、この両者間の一種の通信プロトコルと関連したAPI(Application Program Interface)が必要になってきます。リアルタイムタスクカーネルの呼び出しのインタフェースやJavaスレッドとリアルタイムタスク間の通信インタフェースを標準化しておけば、Javaを組込みシステムに適用する場合に標準に従った設計をすればよく設計効率が上がること、Javaプログラム、リアルタイムプログラムの双方のポータビリティが向上し、ひいてはプログラム流通が促進されることなどのメリットがあります。具体的には、JavaプログラムからITRON仕様OS資源のアクセスインタフェース(タイプ1)、 JavaプログラムとITRONタスクで、Javaのオブジェクト共有インタフェース(タイプ2)、JavaプログラムとITRONタスクがストリーム通信インタフェース(タイプ3)の3種類の通信インタフェース仕様が標準化されています。

当初JTRON仕様は、トロンプロジェクトにおいて仕様が検討され97年に仕様が公開されました。これがJTRON1.0仕様です。これを補完する形でITRON部会がリアルタイムOS(RTOS)とJava実行環境の連携を強化したJTRON2.0仕様の策定を行い98年秋に仕様を公開しました。μITRON4.0仕様が99年6月に仕様が公開され、これに伴い、ITRON部会JTRON仕様WGではJTRON仕様改定を開始し、今ここにJTRON2.1仕様を公開するに至りました。

JTRON2.1仕様の特長

JTRON2.1仕様の特長は、次の通りです。組込みシステムを開発する際に、Java実行環境とITRON仕様OSの両者の利点を活用することが可能になります。JavaプログラムとITRONタスク間の3通りの通信インタフェースを標準化しており、アプリケーションに応じて使い分けることができます。

JTRON2.1仕様におけるJTRON1.0仕様、JTRON2.0仕様との主な違いは次のとおりです。

  1. JTRON2.1仕様では、リアルタイムOSをμITRON4.0仕様に対応させました。
  2. JTRON2.1仕様では、共有オブジェクト機能において、Java言語のネイティブインタフェースであるJNI(Java Native Interface)に対応させました。
  3. JTRON仕様実装の経験に基づく修正が加えられた。

業界標準のITRON仕様OSとの整合性を重視して設計されていますが、その大部分は他のリアルタイムOSへも適用可能です。また、オープンな仕様であり、誰でも自由にライセンス料なしで、仕様に準拠した製品を開発・販売することができます。仕様準拠のソフトウェア製品が、複数の企業から入手可能になる予定です。

JTRON2.1仕様は、他のITRON仕様と同様にオープンな仕様であり、誰でも自由にライセンス料なしで利用することができます。また、JTRON2.1仕様書はトロン協会で頒布の予定です。(一般:5000円、トロン協会会員:3000円)

今後の予定

トロン協会ITRON部会では東京ビッグサイトで開催される「MST2000」のJTRON仕様セミナー(11月17日)において、JTRON2.1仕様の解説を行います。詳細は、http://www.jasa.or.jp/mst/を御覧下さい。

問い合わせ先

技術問い合わせ:Email: tron@sepia.ocn.ne.jp
報道問い合わせ:(社)トロン協会 ITRON事務局
TEL: 03-3454-3191 FAX: 03-3454-3224
Email: torutake@sepia.ocn.ne.jp URL:http://www.itron.gr.jp/


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