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ITRON仕様OSの利用動向に関するアンケート調査結果



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1.アンケート調査の概要

ITRON仕様OSの利用動向と利用者の評価、ITRON関連の活動に対する要求事 項を調査するために、アンケート調査を実施し、その結果を分析した。その概 要は次の通りである。

1.1 アンケート調査期間

平成8年11月〜平成9年1月

1.2 アンケート調査の実施方法と回答数

(1) 調査の実施方法

アンケート用紙を次の方法で配布し、回答を収集・集計した。

アンケート用紙は、主に日本国内に対して配布し、その回答を集計・分析 した。ただし、来年度以降海外におけるアンケート調査も必要と考えており、 その試行という位置付けで、海外に対しても少数のアンケート用紙を配布し回 答を収集した。ただし、収集できたデータ数が少ないため、今回の集計・分析 対象とはしていない。

(2) 配布数と回答数

上記の方法でアンケート用紙を配布したところ、287通の回答を回収するこ とができた。配布方法別の配布数と回答数は次の通り。

配布数 回答数 回収率
ダイレクトメイル 803 201 25.0%
展示会 996 64 6.4%
インターネット --- 22 ---

今年度の調査において、ダイレクトメイル分の回収率は昨年度 (35.5%) よ りも低くなっている (昨年度はダイレクトメイルのみを用いた)。これは、調 査対象を ITRON関連に絞り込み、組み込み機器の開発技術者を想定してアンケ ートを作成したため、それ以外の人が受け取った場合にはアンケートに答えな かったためと思われる。昨年度の調査においても、アンケートの総回答数の内、 ITRON関連の設問に回答したのは半分強に過ぎず、ITRON関連だけを考えると回 収率は 18.3% となっている。つまり、ITRON関連だけを考えれば、昨年度より も回収率は上がっているということができる。

今年度始めて、展示会におけるアンケート用紙配布やインターネットを用 いた調査を行ったが、経験不足もあり、十分な効果を上げられなかった。特に 展示会での配布は、アンケート用紙が多くの資料の中に埋もれてしまい、(当 初から予想したことではあるが) 回収率的にはあまり期待できないことが分かっ た。

1.3 アンケート対象と調査項目

アンケート調査の趣旨から、リアルタイムOSの (潜在的な) ユーザである 組み込み機器の開発技術者を想定回答者としてアンケートを作成した。主な調 査項目は次の通りである。

(1) 最近開発した組み込み機器について

最近開発した最大3つの組み込み機器について、アプリケーション分野、シ ステムの規模、使用したリアルタイムOSを問う項目。

(2) リアルタイムOSの問題点と選択基準

(3) ITRON仕様OSおよび関連する活動等の周知度

(4) ITRON仕様OSの長所・短所

ITRON仕様OSを使用/開発ないしは調査/検討したことがある人に対して、 ITRON仕様OSの長所と短所を問う項目。

(5) ITRONに関連する活動に対する要望・意見

1.4 アンケート回答者の職種

設計・開発が約80%を占めており、アンケートの想定対象者によって回答さ れていることがわかる。

グラフはこちら (8.9KB)
職種 回答率
企画・管理 11%
設計・開発 80%
検査・品質管理 2%
営業技術・営業支援 2%
その他 5%
有効回答数 : 287

表/グラフ1: 回答者の職種

2.調査結果の分析

2.1 最近開発した組み込み機器について

アンケート回答者ないしは回答者の所属する会社が最近開発した最大3つの 組み込み機器について、アプリケーション分野、CPUの規模、プログラムサイ ズ、使用したリアルタイムOSを質問した。

(1) 最近開発した組み込み機器のアプリケーション分野

コンシューマ向けの機器 (家電機器,AV機器,娯楽/教育機器,個人用情報 機器,通信機器(端末)) と工業用の機器 (工業制御/FA機器/設備機器) がそれ ぞれ約3割を占め、残りの約4割はその他の産業用機器となっている。このデー タが設計数に対する統計であることを考えると、妥当な結果と考えられる (コ ンシューマ向けの機器は、1種類の機器あたりの生産個数は多いが、機器の種 類という意味ではそれほど多くない)。

グラフはこちら (15.8KB)
アプリケーション分野 回答率
家電機器 3.2%
AV機器 7.5%
娯楽/教育機器 3.8%
個人用情報機器 4.5%
パソコン周辺機器/OA機器 5.8%
通信機器 (端末) 9.8%
通信機器 (ネットワーク設備) 11.5%
運輸機器 7.0%
工業制御/FA機器/設備機器 28.1%
医用機器 8.3%
その他 10.4%
有効回答数 : 469

表/グラフ2: 最近開発した組み込み機器のアプリケーション分野

(2) 最近開発した組み込み機器に使用したCPU

最近開発された機器では、32ビットのCPUが占める率が最も高く、約45%を 占めている。次いで16ビット,8ビットの順となっており、組み込みシステム の分野においても、32ビットCPUが主流となってきていることがわかる。64ビッ トCPUが使用されるケースはまだ極めて少数である。4ビットが約2%と極めて少 なくなっている。

ただし、この結果は次の理由により、実際の設計数よりも規模が大きい方 にかたよってデータが出ていることが予想される。この調査では、最近開発し た組み込み機器最大3つについて回答してもらっているが、リアルタイムOSに 関する調査であることから、多くの機器を開発している場合には、回答する機 器選ぶ際に (リアルタイムOSを使っているような) 大きい機器にかたよること が予想される。また、1つの機器に複数のプロセッサを使っている場合には、 主たるプロセッサについて答えていることからも、4ビットのプロセッサが実 際よりも少なくなっていることが予想される。

グラフはこちら (10.1KB)
使用したCPU 回答率
4ビット 2.1%
8ビット 17.1%
16ビット 34.5%
32ビット 45.2%
64ビット 1.1%
有効回答数 : 469

表/グラフ3: 最近開発した組み込み機器に使用したCPU

(3) 最近開発した組み込み機器のプログラムサイズ

プログラムサイズが64KB未満、64KB以上256KB未満、256KB以上1MB未満、 1MB以上がいずれも約4分の1となっている。1MB以上が4分の1を占めたことは、 組み込みソフトウェアの大規模化が進行していることを示している。継続調査 による変化に興味がもたれる。

グラフはこちら (10.5KB)
プログラムサイズ 回答率
64KB未満 25.4%
64KB以上 256KB未満 23.2%
256KB以上 1MB未満 27.7%
1MB以上 23.7%
有効回答数 : 469

表/グラフ4: 最近開発した組み込み機器のプログラムサイズ

使用CPU別のプログラムサイズのグラフからは、大きいCPUを使っているケ ースほど、プログラムサイズも大きくなっていることが確認できる。

最も多く使われている32ビットのCPUでは、40%を越えるケースでプログラ ムサイズが1MB以上となっており、ここでも組み込みシステムの大規模化が裏 付けられた形となっている。一方で、256KB未満のケースも4分の1程度あり、 高性能のプロセッサを使っていてもプログラムサイズが小さいケースも無視す ることはできない。

グラフはこちら (25.5KB)
使用したCPU プログラムサイズ 母数
64KB未満 64KB以上
256KB未満
256KB以上
1MB未満
1MB以上
4ビット 100.0% 0.0% 0.0% 0.0% 10
8ビット 82.5% 12.5% 5.0% 0.0% 80
16ビット 21.6% 34.6% 33.3% 10.5% 162
32ビット 3.8% 19.8% 34.0% 42.5% 212
64ビット 0.0% 20.0% 0.0% 80.% 5
総計 25.4% 23.2% 27.7% 23.7% 469
有効回答数 : 469

表/グラフ5: 使用CPU別のプログラムサイズ
※ 棒グラフの上の数字はその項目の母数を示す。

(4) 最近開発した組み込み機器に使用したOS

全体的な傾向としては、OSを用いていないものが28.6%、ITRON仕様OSが 25.6% (内、市販ITRON仕様OS 15.6%、自社用ITRON仕様OS 10.0%)、自社用独自 仕様OSが20.7%、その他の市販OSが25.1%となっている。OSを用いていないもの を除くとITRON仕様OSの比率は3分の1を越えている。また市販のOSの中では、 ITRON仕様OSが約4割を占める。

その他の市販OSの中では、Wind Rivers Systems 社製のOS (VxWorksなど) が6.2%、Microsoft 社製のOS (MS-DOS,Windowsなど) が4.1%、Ingegrated Systems 社 (ISI) 製のOS (pSOS など) と Accelerated Technology 製のOS (Nucleus Plusなど) が各1.9%、 CTRON仕様OSと Microware Systems 社製のOS (OS-9など) が各1.5%、その他はいずれも1%未満となっている。

グラフはこちら (16.3KB)
使用したOS 回答率
市販のITRON仕様OS 15.6%
自社用のITRON仕様OS 10.0%
Wind Rivers Systems社製のOS (VxWorks など) 6.2%
Microsoft社製のOS (MS-DOS、Windows など) 4.1%
Accelerated Technology社製のOS (Nucleus Plus など) 1.9%
Integrated Systems (ISI) 社製のOS (pSOS など) 1.9%
Microware Systems社製のOS (OS-9 など) 1.5%
CTRON仕様OS 1.5%
その他の市販OS 8.1%
自社用独自仕様OS 20.7%
OSを用いていない 28.6%
有効回答数 : 469

表/グラフ6: 最近開発した組み込み機器に使用したOS

使用したCPUの規模別の使用OSには、次のような傾向がみられる。まず、当 然の結果ではあるが、4ビットでOSを使った例はない。8ビットになると、約4 分の1がOSを使っている。その内の約半分 (つまり全体の約8分の1) が自社用 独自仕様OS、約3分の1 (全体の約12分の1) がITRON仕様OS、残りがその他の市 販OSとなっている。16ビットでは約4分の1がOS未使用、約4分の1が自社用独自 仕様OSで、あわせて半数を越えている。32ビットでは、約10%がOS未使用、20% 弱が自社用独自仕様OSで、あわせて3分の1に満たない。この差にも関わらず、 どちらにおいてもITRON仕様OSの使用率は約30%となっており、CPUの規模によ らずITRON仕様OSが広く使われていることがわかる。16ビットと32ビットでの OS未使用や自社用独自仕様OSの比率の差は、その他の市販OSの比率の差に対応 している。

グラフはこちら (31.0KB)
使用したCPU 使用したOS 母数
I
T
R
O
N


O
S
C
T
R
O
N


O
S






O
S







O
S
O
S






4ビット 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 100.0% 10
8ビット 8.8% 0.0% 3.8% 12.5% 75.0% 80
16ビット 29.0% 0.0% 15.4% 29.0% 26.5% 162
32ビット 30.2% 3.3% 38.2% 18.4% 9.9% 212
64ビット 40.0% 0.0% 40.0% 20.0% 0.0% 5
総計 25.6% 1.5% 23.7% 20.7% 28.6% 469
有効回答数 : 469

表/グラフ7: 使用CPU別の使用OS
※ 棒グラフの上の数字はその項目の母数を示す。

プログラムサイズ別の使用OSは、次のようになっている。まずプログラム サイズ64KB未満では、約4分の3がOS未使用で、ITRON仕様OSは8%と、8ビット CPUの場合と極めて似た傾向を示している。他のケースでは、ITRON仕様OSの使 用比率はいずれも30%前後で、プログラムサイズによらずITRON仕様OSが使われ ていることがわかる。自社用独自仕様OSは、(64KB未満の小さいシステムを除 いて)プログラムサイズが大きくなるに連れて使用率が下がる傾向にあるが、 いずれにおいても20%〜30%程度となっている。OS未使用の比率はプログラムサ イズが大きくなるほど下がる。その分、その他の市販OSの使用率が大きくなる。 プログラムサイズが1MB以上の機器では、43%がその他の市販OSを使用してい る。

グラフはこちら (25.8KB)
プログラムサイズ 使用したOS 母数
I
T
R
O
N


O
S
C
T
R
O
N


O
S






O
S







O
S
O
S






64KB未満 8.4% 0.0% 3.4% 14.3% 73.9% 119
64KB以上 256KB未満 30.3% 0.9% 17.4% 28.4% 22.9% 109
256KB以上 1MB未満 34.6% 1.5% 30.8% 20.8% 12.3% 130
1MB以上 28.6% 3.6% 43.2% 19.8% 4.5% 111
総計 25.6% 1.5% 23.7% 20.7% 28.6% 469
有効回答数 : 469

表/グラフ8: プログラムサイズ別の使用OS
※ 棒グラフの上の数字はその項目の母数を示す。

最後に、アプリケーション分野別に使用OSを見る。グラフでは、ITRON仕様 OSの比率が高い分野ほど左に配置した。サンプル数 (比率を求める場合の母数) が少ないアプリケーション分野もあるが、一般的な傾向としては、コンシュー マ向けの機器 (家電機器,AV機器,娯楽/教育機器,個人用情報機器,通信機 器(端末)) においてITRON仕様OSの比率がいずれも30%を越えており、コンシュ ーマ向け機器の分野においてITRON仕様OSが広く使われていることがわかる。 パソコン周辺/OA機器,工業制御/FA機器/設備機器,医用機器の各分野では ITRON仕様OSは20〜25%程度で、ITRON仕様以外のOSの使用率が高くなっている。 通信機器(ネットワーク設備)の分野では、ITRON仕様OSの使用率は15%と低くなっ ているが、CTRON仕様OSの使用率が約13%あり、トロン仕様OS全体でみると30% 近くになる。ITRON仕様OSの使用率が最も低い運輸機器の分野では、OSを用い ていないケースが58%もあり、また0Sを使っているケースでも自社製独自仕様 OSの比率が高く、ITRON仕様に限らず汎用のOSの適用が難しい分野であるとい ことができる。

グラフはこちら (38.6KB)
アプリケーション分野 使用したOS 母数
I
T
R
O
N


O
S
C
T
R
O
N


O
S






O
S







O
S
O
S






個人用情報機器 57.1% 0.0% 28.6% 4.8% 9.5% 21
娯楽/教育機器 44.4% 0.0% 16.7% 22.2% 16.7% 18
家電機器 40.0% 0.0% 13.3% 20.0% 26.7% 15
AV機器 34.3% 0.0% 8.6% 11.4% 45.7% 35
通信機器 (端末) 32.6% 0.0% 21.7% 30.4% 15.2% 46
工業制御/FA機器/設備機器 24.2% 0.0% 27.3% 19.7% 28.8% 132
パソコン周辺機器/OA機器 22.2% 0.0% 14.8% 25.9% 37.0% 27
医用機器 20.5% 0.0% 25.6% 15.4% 38.5% 39
その他 20.4% 0.0% 32.7% 16.3% 30.6% 49
通信機器 (ネットワーク設備) 14.8% 13.0% 35.2% 27.8% 9.3% 54
運輸機器 9.1% 0.0% 6.1% 27.3% 57.6% 33
総計 25.6% 1.5% 23.7% 20.7% 28.6% 469
有効回答数 : 469

表/グラフ9: アプリケーション分野別の使用OS
※ 棒グラフの上の数字はその項目の母数を示す。

2.2 リアルタイムOSの問題点と選択基準

すべてのアンケート回答者に対して、リアルタイムOSの問題点と選択基準 について複数の選択肢を提示し、最も該当するもの1つに「◎」、その他該当 するもの最大2つに「○」を記してもらった。選択肢の中には「その他」も用 意し、それを選んだ場合には、問題点/選択基準を自由に記述してもらった。 以下のグラフで「単数回答」とあるものは、「◎」を記した項目の全体に対す る比率を示したものである。「複数回答」とあるものは、各項目について、ど れだけの比率の回答者が「◎」または「○」を記したかを示している。

(1) リアルタイムOSの問題点

リアルタイムOSの問題点として最も多く選ばれたのは、「使いこなせる技 術者が不足またはいない」で、全体の半数以上が問題点と指摘しており、28% の回答者が最大の問題点であるとしている。

単数回答では、それに次いで「OSにより仕様の違いが大きく切り替えの負 担が大きい」「性能・機能が要求条件に適合しない」「OSのサイズや使用リソー スが大きすぎる」「開発環境やツールが不足」「価格が高い」がいずれも13% で並んでいる。この内の2つめと3つめは、OSの機能・性能とアプリケーション 要求の適合性の問題と括ることができ、この問題が2番目ととらえることもで きる。

複数回答で見た場合には、13%で並んでいる項目の内、「開発環境やツール が不足」を選んだ率が約40%と、他の項目より抜き出ている。開発環境やツー ルの問題は、最大の問題ではないが、それに次ぐ問題ととらえられていると考 えることができる。

グラフはこちら (14.6KB)
リアルタイムOSの問題点 回答率
使いこなせる技術者が不足またはいない 28%
OSにより仕様の違いが大きく切り替えの負担が大きい 13%
性能・機能が要求条件に適合しない 13%
OSのサイズや使用リソースが大きすぎる 13%
開発環境やツールが不足 13%
価格が高い 13%
ベンダによるサポートが不十分 3%
その他 4%
有効回答数 : 219

表/グラフ10: リアルタイムOSの問題点 (単数回答)

グラフはこちら (20.6KB)
リアルタイムOSの問題点 回答率
使いこなせる技術者が不足またはいない 51%
OSにより仕様の違いが大きく切り替えの負担が大きい 32%
性能・機能が要求条件に適合しない 28%
OSのサイズや使用リソースが大きすぎる 27%
開発環境やツールが不足 40%
価格が高い 34%
ベンダによるサポートが不十分 16%
その他 6%
有効回答数 : 263

表/グラフ11: リアルタイムOSの問題点 (複数回答)

「開発環境やツールを不足」を挙げた回答者に対して、具体的にどのよう なツールが不足しているかを具体的に記述してもらう設問に対しては、半数を 超える回答者がデバッガ関連を挙げている。特に、タスクを認識できるデバッ ガを挙げている回答者が目立つ。また、ICEや (リアルタイム性の検証を含め て) 性能評価/検証のためのツールを挙げているケースも多い。その他、設計 支援など上流工程をサポートするツールやパソコン上で動作するツールを要望 する声もあり、全体的にみると、ソフトウェア開発のためのツールが網羅的に 挙げられている。

(2) リアルタイムOSの選択基準

単数回答では、「性能・機能が要求条件に適合するから」が36%を占めてお り、最も重要な選択基準となっていることがわかる。それに次いで、「自社内 で使用実績があるから」「世の中で多く使われているから」という実績重視の 選択基準が、両者をあわせると24%にのぼっている。それに対して「ベンダの サポートが良いから」はわずか2%しかない。ベンダのサポートが重視されてい ないのか、いずれのベンダも十分なサポートをしており問題となっていないの かが、興味があるところである。

複数回答でみると、実績重視の選択基準は相対的に小さいのに対して、単 数回答ではいずれも10%弱であった「良い開発環境やツールがあるから」「価 格が安いから」が相対的に高い比率となっており、2番目ないしは3番目の選択 基準として重視されていることがわかる。

グラフはこちら (15.6KB)
リアルタイムOSの選択基準 回答率
世の中で多く使われているから 9%
自社内で使用実績があるから 14%
多種類のチップに対応しているから 4%
性能・機能が要求条件に適合するから 36%
OSのサイズおよび使用リソースが小さいから 9%
良い開発環境やツールがあるから 8%
価格が安いから 7%
ベンダのサポートが良いから 2%
信頼性が高いから 7%
その他 4%
有効回答数 : 229

表/グラフ12: リアルタイムOSの選択基準 (単数回答)

グラフはこちら (20.2KB)
リアルタイムOSの選択基準 回答率
世の中で多く使われているから 21%
自社内で使用実績があるから 32%
多種類のチップに対応しているから 15%
性能・機能が要求条件に適合するから 52%
OSのサイズおよび使用リソースが小さいから 23%
良い開発環境やツールがあるから 30%
価格が安いから 28%
ベンダのサポートが良いから 10%
信頼性が高いから 26%
その他 5%
有効回答数 : 266

表/グラフ13: リアルタイムOSの選択基準 (複数回答)

2.3 ITRON仕様OSおよび関連する活動等の周知度

(1) ITRON仕様OSの周知度

「ITRON仕様OSを使用/開発したことがある」「ITRON仕様OSを調査/検討し たことがある」をあわせて約3分の2、逆に「全然存在を知らなかった」とした 回答者は1名のみと、ITRON仕様の知名度が十分に高いことが確認できた。 「ITRON仕様OSを使用/開発したことがある」とした回答者が39%であることは、 ITRON仕様OSの使用率が約4分の1であることと適合していると考えていいだろ う。今後、「話しに聞いたことがある」とした回答者にITRON仕様について調 査/検討させるような、より一層の広報活動が必要と考えられる。

グラフはこちら (10.2KB)
ITRON仕様OSの周知度 回答率
ITRON仕様OSを使用/開発したことがある 39%
ITRON仕様OSを使用/開発したことはないが
調査/検討したことがある
28%
話に聞いたことはあるが
調査/検討したことはない
33%
全然存在を知らなかった 0%
有効回答数 : 279

表/グラフ14: ITRON仕様OSの周知度

(2) ITRONに関連する活動等の周知度

「展示会でのブース出展や講演」が3分の2を越える周知度があることを除 くと、次に多いITRON専門委員会の周知度も約35%しかなく、(いくつかの極め て周知度の低いものを除いて) 他の項目の周知度はいずれも20%〜30%となって いる。 ITRON仕様OSを使用/開発したことがある回答者が39%であることを考え ると低い水準に留まっており、ITRONに関連する活動等の周知度を上げるよう な広報活動が求められている。

グラフはこちら (21.8KB)
ITRONに関連する活動等の周知度 回答率
展示会でのブース出展や講演 68%
ITRONオープンセミナー 24%
ITRONホームページ 26%
ITRONニュースレター 21%
ITRON仕様準拠製品登録制度 22%
μITRON3.0仕様 28%
μITRON3.0互換性チェックシート 9%
ITRON専門委員会 35%
TRONプロジェクト国際シンポジウム 24%
TRONSHOW 30%
TRONWARE 27%
ITRON Club メーリングリスト 8%
有効回答数 : 287

表/グラフ15: ITRONに関連する活動等の周知度

2.4 ITRON仕様OSの長所・短所

2.3の(1)の設問で、ITRON仕様OSを使用/開発ないしは調査/検討したことが あるとした回答者に対して、ITRON仕様OSの長所と短所を尋ねた。複数の選択 肢を提示し、最も該当するもの1つに「◎」、その他該当するもの最大2つに 「○」を記してもらった。グラフの「単数回答」と「複数回答」の意味は、 2.2の場合と同様である。

(1) ITRON仕様OSの長所

単数回答のグラフにおいて、「仕様の理解が容易」「OSのサイズおよび使 用リソースが小さい」がそれぞれ20%を越えており、ITRON仕様OSの長所が良く 理解されている。特に、「仕様の理解が容易」を挙げた回答者が多かったこと は、技術者の教育を重視するというITRON仕様の設計方針が成功していること を示している。また、「多種類のチップに対応している」という長所を挙げて いる回答者も多く、ITRON仕様OSが多くのCPU用に実装されていることが評価を 得ている。それに対して、「良い開発環境やツールがある」を挙げる人は極め て少なかった。複数回答でみた場合には、「価格が安い」という長所が相対的 に多くなっている。

グラフはこちら (13.7KB)
ITRON仕様OSの長所 回答率
仕様の理解が容易 23%
多種類のチップに対応している 13%
性能が高い 9%
機能が豊富 5%
OSのサイズおよび使用リソースが小さい 22%
良い開発環境やツールがある 1%
扱える技術者が多い 4%
価格が安い 9%
サポートが良い 0%
その他 9%
目立った長所はない 5%
有効回答数 : 140

表/グラフ16: ITRON仕様OSの長所 (単数回答)

グラフはこちら (20.7KB)
ITRON仕様OSの長所 回答率
仕様の理解が容易 41%
多種類のチップに対応している 33%
性能が高い 19%
機能が豊富 11%
OSのサイズおよび使用リソースが小さい 38%
良い開発環境やツールがある 5%
扱える技術者が多い 7%
価格が安い 27%
サポートが良い 1%
その他 13%
目立った長所はない 9%
有効回答数 : 180

表/グラフ17: ITRON仕様OSの長所 (複数回答)

(2) ITRON仕様OSの短所

単数回答で「開発環境やツールを不足」を挙げた回答者が全体の3分の1を 越えており、しばしば指摘される問題点がここでも再確認された形になってい る。次いで、「目立った短所はない」とした回答者が (僅差で) 多く、11%と なっている。複数回答では、単独回答でいずれも10%であった「実装依存部分 が大きくソフトウェアの移植性が悪い」「扱える技術者が不足」が相対的に多 くなっている。ソフトウェアの移植性を向上させるような標準化も必要性を増 していることがわかる。

グラフはこちら (15.0KB)
ITRON仕様OSの短所 回答率
仕様の理解が難しい 4%
実装依存部分が大きくソフトウェアの移植性が悪い 10%
対応しているチップが少ない 4%
性能が低い 4%
機能が不足 5%
OSのサイズおよび使用リソースが大きい 4%
開発環境やツールが不足 33%
扱える技術者が少ない 10%
価格が高い 7%
サポートが悪い 1%
その他 7%
目立った短所はない 11%
有効回答数 : 134

表/グラフ18: ITRON仕様OSの短所 (単数回答)

グラフはこちら (22.2KB)
ITRON仕様OSの短所 回答率
仕様の理解が難しい 11%
実装依存部分が大きくソフトウェアの移植性が悪い 22%
対応しているチップが少ない 9%
性能が低い 7%
機能が不足 15%
OSのサイズおよび使用リソースが大きい 6%
開発環境やツールが不足 43%
扱える技術者が少ない 23%
価格が高い 12%
サポートが悪い 13%
その他 11%
目立った短所はない 18%
有効回答数 : 180

表/グラフ19: ITRON仕様OSの短所 (複数回答)

2.5 ITRONに関連する活動に対する要望・意見

「開発環境(特にデバッガ)とのインタフェース標準化」を挙げた人が55%と 最も多く、次いで「ソフトウェア部品(ミドルウェア)のインタフェースの標準 化」「ネットワークサポート」がいずれも40%台、次いで「C++/JAVA言語バイ ンディングの標準化」「フリーのITRON仕様OS」が30%台となっている。リアル タイムOSが使える技術者が少ないことが問題となっているにも関わらず、「教 育セミナーの開催」を希望する人は意外と少ない。

グラフはこちら (21.2KB)
ITRONの今度の取り組みに対する要望 回答率
ソフトウェア部品(ミドルウェア)のインタフェースの標準化 47%
開発環境(特にデバッガ)とのインタフェースの標準化 55%
C++/JAVA言語バインディングの標準化 36%
ネットワークサポート 43%
マルチプロセッササポート 22%
ハードリアルタイムサポート 30%
フォールトトレランスサポート 16%
フリーのITRON仕様OS 36%
教育セミナーの開催 22%
その他 5%
有効回答数 : 287

表/グラフ20: ITRONの今後の取り組みに対する要望

ITRONに関する活動に対する意見・要望を自由に記述する設問に対しては、 記入している回答者の総数が少なく傾向を読みとることは難しいが、宣伝・広 報活動の充実や、よりコンパクトなOS仕様の開発を望む回答者が複数みられた。

2.6 総括

最近開発した組み込み機器についての調査結果からは、組み込みシステム の大規模化の傾向が読み取れる。使用したOSとしてITRON仕様OSが3分の1越え ており (OSを使用していないケースを除いた比率)、他のOS仕様を大きく引き 離して、国内においては業界標準仕様の地位を確かなものにしていることがわ かる。

ITRON仕様OSの長所・短所としては、ITRON専門委員会における認識とほぼ 一致しており、認識が正しいことが確認できた。特に、ITRON仕様OSの短所と して開発環境やツールの不足を挙げた回答者が極めて多かったことは、ITRON 仕様OSの開発環境やツールの充実に向けての活動が強く望まれていることを、 再認識する結果となった。周知度に関しては、ITRON仕様OS自身の周知度がか なり高いレベルにあることは確認できたが、一方で関連する活動等の周知度は 十分ではなく、一層の広報活動が必要と考えらえる。

一方で、OSを使っていないケースも全体の30%近くあることが分かった。小 さい規模のシステムにおいてOSが適用できないのはやむを得ないと考えられる が、規模の大きいシステムにおいてもOS未使用のケースがあり、リアルタイム OSの普及のためにより一層の努力が必要と考えられる。特に、リアルタイムOS の問題点として技術者の不足を挙げた回答者が多いことから、リアルタイムOS を使える技術者の教育に力を入れることが重要と考えられる。

今年度の調査では、昨年度までのトロン全般に関する調査からITRON仕様OS に関する調査に絞り込んだことと、組み込みシステムにどのようなOSが使われ ているかを正確に調査したいという動機から、アンケートの質問項目を全面的 に見直した。そのため、残念ながら昨年度との比較で変化を分析することはで きないが、全体的に精度の高い調査結果が得られたと評価しており、来年度以 降の継続調査の結果が期待される。

参考


※ この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
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