研究プロジェクト

システムオブシステムズのモデリングと総合信頼性

System of Systems(複数の独立したシステムが連携して創発的な目的を果たす仕組み)を、自律的に意思決定する主体が相互作用する社会技術システムとして捉え、その全体挙動と総合信頼性(英語では dependability)を設計する新しい工学の確立を目指しています。

システムオブシステムズのモデリングと総合信頼性

研究テーマ

本研究では、System of Systems(SoS)を単なるシステムの集合ではなく、自律的に意思決定する主体が相互作用する社会的システムとして捉えます。対象となるのは、個々の要素の正しさだけでは説明しきれない、全体としての振る舞いが重要になる大規模な社会技術システムです。

目指しているのは、そのような SoS に対して、全体挙動を設計できる新しい工学の確立です。構造や接続関係だけでなく、主体どうしの相互作用、利害、意思決定まで含めて扱い、望ましいシステム全体の振る舞いを説明し、設計し、検証するための方法論を構築しようとしています。

社会課題

自動運転交通、スマートグリッド、スマートシティ、データ連携基盤など、現代のシステムは複数の主体が独立に意思決定する分散型システムとなっています。このような環境では、各主体が合理的に行動していても、その相互作用の結果として全体に望ましくない現象が生じることがあります。

  • 利己的な行動により全体効率が低下することがあります。たとえば交通では渋滞、エネルギーでは電力ピークのような問題が生じます。
  • 想定外の相互作用によって、システム全体が不安定化することがあります。
  • 個々のシステムがそれぞれ最適に動いていても、全体としては機能しない場合があります。

従来研究の限界

従来のシステム工学や SoSE は、アーキテクチャ設計、通信・制御、ソフトウェア設計といった観点で大きな成果を上げてきました。一方で、実社会の SoS で本質的になる「主体がどう行動するか」という問題は、十分には扱われていません。

そのため、構造としては正しく設計され、個々の要素が仕様通りに構築されていても、実運用では期待したように機能しないという問題が残ります。SoS を実社会で機能させるには、構造設計だけでなく、主体の意思決定と相互作用を設計対象に含める必要があります。

本研究のアプローチ

本研究では、「制御する」のではなく、「望ましい行動が自然に選ばれるように設計する」という考え方を採用します。具体的には、ルールや契約、インセンティブを設計し、各主体が自律的に行動しても、全体として望ましい状態に収束するような仕組みを構築します。

これは、外部から全体を一括制御する発想ではなく、主体の意思決定と相互作用を前提に、結果として望ましい均衡が現れる条件を設計するという立場です。SoS を社会技術システムとして扱うことで、構造設計に加えて、行動設計や制度設計まで含めた方法論へ広げることを目指します。

今後の展開

今後は、SoS を均衡として設計するという考え方をさらに具体化し、実社会で活用可能な設計・検証基盤の確立を目指します。Contract Architecture Description Language(CADL)によるルール・契約の形式化、自律主体を前提とした動的適応の設計、システム全体としての総合信頼性の評価、さらにデジタルツインを用いた実証を通じて、社会技術システムとしての SoS を扱う方法論へ発展させていきます。

  • ルール・契約の形式化と検証: システム構成だけでなく、ルールや契約も記述可能にし、矛盾や不整合を設計段階で検出します。
  • 自律主体を前提とした動的適応の設計: 各主体が独立に行動・学習しても、全体として望ましい状態に収束する仕組みを明らかにします。
  • システム全体としての総合信頼性評価: 個々の正しさだけでなく、相互作用による問題を含めて評価し、回避方法を検討します。

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