詳細
背景
ネットワークにつながる IoT 機器は、家庭でも産業現場でも急速に増えています。こうした機器には、一般の利用者が使うものもあれば、専門知識を持つ技術者が管理するものもあります。
専門家が管理する機器では、保守や安全管理を計画的に行いやすい一方、家庭向けの IoT 機器では、利用者自身がマニュアルや更新作業に頼って安全性を保つことが多くなります。
研究プロジェクト
IoT 機器とブロックチェーン、スマートコントラクトを組み合わせて、機器の利用許可やデータ共有を分かりやすく管理する仕組みを研究しています。
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ネットワークにつながる IoT 機器は、家庭でも産業現場でも急速に増えています。こうした機器には、一般の利用者が使うものもあれば、専門知識を持つ技術者が管理するものもあります。
専門家が管理する機器では、保守や安全管理を計画的に行いやすい一方、家庭向けの IoT 機器では、利用者自身がマニュアルや更新作業に頼って安全性を保つことが多くなります。
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IoT 機器の動作ログやセンサーデータは、利用者が十分に意識しないままメーカー側へ送られている場合があります。こうしたデータは機器の監視や AI の学習などに使われますが、利用者自身が自由に活用できないことも少なくありません。
結果として、機器を所有する側が、自分の機器やデータの扱われ方を把握し、利用範囲を選ぶ手段が十分に整っていないという問題が残ります。
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本研究では、IoT 機器とブロックチェーン、スマートコントラクトなどの Web3 技術を組み合わせたソフトウェアフレームワークを開発しています。
利用者が機器メーカーや第三者にどのような権限を与えるか、データをどこまで使ってよいかを、スマートコントラクトで記録し、自動的に扱えるようにすることを目指しています。これにより、データ利用の透明性と検証しやすさを高めます。
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出発点は、ブロックチェーンを用いた IoT 機器のセキュアなソフトウェア更新フレームワーク(2018)で、その発展形は DICOMO 2022 で優秀論文賞を受賞しました。機器の一生を分散台帳で支えるという、このテーマの原型になった研究です。
現在は対象をデータ流通へ広げています。ゼロ知識証明でアカウント情報を匿名化するアクセス制御(Electronics, 2025)、自己主権型アイデンティティ(SSI)による認証とメタデータ検索(BCCA 2025)、プライバシーを守る医療データ共有モデル PPDS(BCCA 2025)、エッジ処理を組み込んだデータ流通基盤(PerCom ワークショップ, 2025)など、IoTxWeb3 フレームワークを構成する要素技術を国際会議や論文誌で発表してきました。
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この仕組みが広がると、機器の所有者は、自分のデータが誰にどう使われているかを自分で確かめ、許可する範囲を自分で決められるようになります。メーカー任せにしない、データの自己主権が実現します。
メーカーの側にも利点があります。許可の記録が検証可能な形で残るため、利用者の信頼を保ちながらデータを活用したサービスを提供できます。売って終わりではなく、使われ続ける間ずっと価値を生む IoT の基盤を目指しています。
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目指しているのは、機器・データ・サービスの権利関係がスマートコントラクトで自動的に管理され、個人も企業も安心してデータを持ち寄れる分散型のデータ流通基盤です。
特定の事業者に依存しない自己主権型の仕組みを、家庭の IoT から産業やモビリティのデータ共有まで広げることが長期的な目標です。
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IoTxWeb3 フレームワークを、実際のサービスに近づけていく段階です。学生の研究テーマも、次のような方向性のなかから相談して決めていきます。
初めて学ぶ人へ
専門の論文より先に、日本語で書かれた次の解説から入るのがおすすめです。
渡辺晴美, 今村誠, 久住憲嗣(編著), コロナ社, 2020. 第2章を松原が執筆.
松原豊, 機能材料, 2017.
関連リンク
公開ソフトウェア・ツール
プロジェクト・関連サイト
関連業績
2025
Enhancing Account Information Anonymity in Blockchain-Based IoT Access Control Using Zero-Knowledge ProofsYuxiao Wu, Yutaka Matsubara, Shoji Kasahara
Electronics, Vol.14, Issue 14
ゼロ知識証明(内容を明かさずに正しさだけを証明する暗号技術)を使い、ブロックチェーンでIoT機器のアクセス権を管理する際にアカウント情報の匿名性を高める手法を提案した論文です。利用者は自分がどのアカウントかを明かさずに、アクセス権を持つことだけを証明できます。公開されるブロックチェーンの記録から個人の行動が推測されにくくなり、透明性とプライバシーの両立につながります。
2025
SSI-Enabled Authentication and Enhanced Metadata Search in Blockchain-based Decentralized IoT Data PlatformsLuyonghe Li, Yuichiro Yasue, Yutaka Matsubara
IEEE 1st International Workshop on Blockchain for Decentralized Trust and Digital Identity (B4TI) at BCCA 2025, Croatia, Oct 2025
利用者が自分のID情報を自分で管理するSSI(自己主権型アイデンティティ)による認証と、メタデータ検索の改善を、ブロックチェーン上の分散型IoTデータ基盤に組み込む手法を提案した論文です。SSIでは中央の管理者に頼らず利用者自身がID情報を管理するため、分散型という基盤の性質に合っています。検索の強化により、共有されたIoTデータを見つけて活用しやすくなります。
2025
PPDS: A Practical and Privacy-Preserving Data Sharing Model for Blockchain-Based IoT e-Health Systems Using ECC, Zero-Knowledge Proof, and Access ControlYuxiao Wu, Kenta Kawai, Yutaka Matsubara
IEEE International Conference on Blockchain Computing and Applications (BCCA 2025), Croatia, Oct 2025
ブロックチェーンを使うIoT医療システム向けに、楕円曲線暗号・ゼロ知識証明・アクセス制御を組み合わせ、プライバシーを守りながらデータを共有するモデルPPDSを提案した論文です。医療データは特に扱いに注意が必要なため、本人が適切な相手にだけ記録を共有できるようにしつつ、身元や内容を保護します。複数の暗号技術を組み合わせながらも、IoT機器で使える実用性を重視しています。
2025
Flexible Edge Processing in Blockchain-based Secure IoT Data Distribution FrameworkKenta Kawai, Yuxiao Wu, Yutaka Matsubara, Hiroaki Takada
BRAIN 2025 at PerCom 2025, Washington D.C., Mar 2025
ブロックチェーンで安全性を確保したIoTデータ流通基盤に、データの発生場所に近いエッジ側で柔軟に処理を行う仕組みを加えた論文です。発生源の近くで処理することで通信量を減らし、生データを遠くのサーバへ送らずに済みます。ブロックチェーンが処理結果の信頼性を支える構成で、プライバシー保護にもつながります。
2023
IoT機器情報の流通を支援する受給マッチングシステム河合健太, 松原豊, 高田広章
DICOMO 2023, pp.45-56, 富山国際会議場, Jul 2023
2022
ブロックチェーン技術を用いたIoTデバイスのソフトウェア更新フレームワーク中西遼太, 松原豊, 高田広章
分散、協調とモバイル(DICOMO2022)シンポジウム
優秀論文賞受賞。
2022
優秀論文賞「ブロックチェーンを活用したIoT機器のソフトウェア更新フレームワーク」中西亮太, 松原豊, 高田広章
マルチメディア、分散、協調とモバイルシンポジウム(DICOMO2022)
2020
つながる!基礎技術 IoT入門(第2章 セキュリティ)渡辺晴美, 今村誠, 久住憲嗣(編著)
コロナ社
IoT入門書のセキュリティの章です。ネットワークにつながる機器がどのような経路で攻撃を受けるのか、暗号や認証といった基本的な守り方がどう働くのかを解説しています。IoTをこれから学ぶ人が、セキュリティの全体像をつかむための入り口になる内容です。
第2章「セキュリティ」を松原豊が執筆。
2020
Mindstorms EV3のセキュアリモートソフトウェアアップデート伊藤大地, 松原豊, 高田広章
第54回EMB合同研究発表会(ETNET2020)
2020
IoT機器の軽量セキュア通信におけるQUICの性能評価小松大河, 松原豊, 高田広章
第54回EMB合同研究発表会(ETNET2020)
2018
ブロックチェーン技術を用いたIoT機器向けセキュアアップデートフレームワーク長柄啓悟, 松原豊, 高田広章
組込みシステムシンポジウム2018(ESS2018)論文集, pp.36-39, 下呂市, Aug 2018
2018
IoTデバイスのためのTLS 1.3の性能評価小松大河, 松原豊, 高田広章
第51回組込みシステム合同研究発表会(ETNET2019)
2018
ブロックチェーン技術を用いたIoT機器向けセキュアアップデートフレームワーク長柄啓悟, 松原豊, 高田広章
第20回組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST20)
2017
自動車セキュリティの現状とIoT松原豊
機能材料 2017年6月号 連載 IoT時代のセキュリティ対策-繋がる時代に求められる安心・安全-, シーエムシー出版, 2017
IoT時代における自動車セキュリティの現状を紹介した連載記事です。スマートフォン連携や遠隔操作といった便利さの裏で新たに生まれる攻撃経路と、業界で進む対策の方向性を解説しています。ソフトウェア分野になじみのない読者にも読みやすい内容です。
2017
組込みシステム向けのポータブルDoSテストツール長柄啓悟, 青木克憲, 松原豊, 高田広章
組込みシステムシンポジウム(ESS2017)WiP, 下呂, Aug 2017
2017
Miraiマルウェアの組込みシステムに対する攻撃性能評価長柄啓悟, 松原豊, 青木克憲, 高田広章
第46回組込みシステム合同研究発表会
2017
Open-source software-based portable DoS test tool for IoT devicesKeigo Nagara, Katsunori Aoki, Yutaka Matsubara, Hiroaki Takada
Workshop on Internet of Things Security and Privacy Collocated with ACM CCS, Dallas, Nov 2017
関連テーマ
機器1台の信頼
複数のアプリケーションが1つの計算機上で動くときでも、処理の遅れや干渉を抑え、安全に動かし続けるための方法を研究しています。
システムの集合体の信頼
System of Systems(複数の独立したシステムが連携して創発的な目的を果たす仕組み)を、自律的に意思決定する主体が相互作用する社会技術システムとして捉え、その全体挙動と総合信頼性(英語では dependability)を設計する新しい工学の確立を目指しています。
横断テーマ
3つの研究テーマに共通する土台として、作ったシステムが本当に信頼できるかを確かめ、その根拠を説明するための技術を研究しています。並行プログラムのファジング、形式手法による検証、セキュリティ分析、保証ケースなどが対象です。